東ティモール視察レポート

今年で10年目を迎えたnepia 千のトイレプロジェクト。プロジェクトチームは、東ティモールに視察に向かいました。今回の視察の狙いは、今までの活動の成果を知ることはもちろん、まだまだ衛生環境の悪いこの国の現地の声に耳を傾けることでした。

東ティモール奥地への旅。

視察で訪れた村のいくつかでは、支援が始まり、トイレづくりが一気に進行していました。
コバリマ県にあるレオリマ村とフォホアイリコ村は、合わせて1500世帯を超える大きな村。そのうち、トイレがある世帯は、昨年までは500世帯程度でしたが、プロジェクト開始から5ヶ月間で、750世帯がトイレづくりを始めていました。年内には、村の屋外排泄がゼロになったことを祝うセレモニーが開催できる予定です。

トイレづくりが進行中の、いくつかの家を訪れると、トイレづくりには、男性たちだけではなく、女性たちも積極的に参加していました。ナタルシア・グロ・アルベスさんは、自分と自分の母親のふたりでつくりあげたそう。まわりの人にも、「こんなトイレをつくったら?」とさりげなく、すすめていると教えてくれました。
トイレをつくるようになったきっかけで多かったのは、「病気になりたくなかったから」「外で排泄したくなかったから」。トイレができて変わったことは「下痢がなくなった」「健康になった」。トイレづくりが、村を健康に変えていく様子を知ることができました。

トイレの前で幸せそうな家族。ふたりは新婚だった。

完成したトイレの中。きちんと蓋がついている。

トイレをつくっている過程も見ることができた。

一方、支援活動がはじまる前の村を視察すると、状況はまったく違います。東ティモールの奥地、コバリマ県には、一切トイレがない地域もまだまだ存在します。そうした村のひとつ、ブサダオ村では、小さい命が失われていました。
ジョアンナ・アマラさんは、8ヶ月前に、三人目の子どもを産みましたが、生まれたばかりの赤ちゃんは、すぐに呼吸ができなくなって、亡くなりました。フェリックス・アマラルさん一家は、息子ふたりを病気で亡くしていました。アマラルさんは、真剣な表情で、「村には、きれいな水と、トイレが必要だと思う」と語ってくれました。
この地域の保健士に聞くと、1ヶ月に5〜6人が下痢になっているということです。小学生のデオリンダ・カルダソさんは、毎日下痢をしている、と悩みを打ち明けてくれました。

息子ふたりを亡くしているアマラルさん一家を取材した。

デオリンダ・カルダソさんは、毎日下痢に苦しんでいた。

さらに、取材を深めていくと、2002年の独立までの戦火の傷跡は、村の人たちの心に残っていました。森の中に逃げ込んで、暗闇の中で暮らしたこと。家を燃やされたこと。幼いころ、銃を持つ兵士が怖かったこと。まだ、その傷跡は癒えてはいないのです。
そんな中、村の青年会のリーダー、モウジーニョ・アマラルさんは、将来への夢を教えてくれました。病気をなくしたい、若者が養鶏や野菜づくりに取り組めるようにしたい・・・。

青年会のリーダー、モウジーニョ・アマラルさんは将来の夢を語ってくれた。

コバリマ県をはじめ、トイレが普及しておらず、衛生環境が悪い地域が東ティモールには多く残されています。2008年からの支援活動で、東ティモールの衛生の状況は改善しつつありますが、まだまだ、これから。日本でネピアを選んでくださるみなさまといっしょに、東ティモールの失われてゆく命を守りたい、その成果を広げていきたい。プロジェクトチーム一同、そんな気持ちを新たにする視察となりました。
プロジェクトへの応援、引き続き、よろしくおねがいいたします。

支援でつくられたトイレの前で。