nepia 千のトイレプロジェクト2010

視察レポート 越智 守

首都ディリでのミーティングを終え、視察2日目、2009年キャンペーンの支援ですでにトイレがつくられているファトリラウ村を訪れると、家庭143 軒のうち、98 軒に、きれいなトイレができていました。3~4家庭を訪問しましたが、皆さん自慢げに我が家のトイレを紹介してくれました。我々の支援で喜んでくれる人を目の前にすることができ、うれしく思いました。

また、同じく2009年キャンペーンの支援対象地域であるククマテ村では、建設中のトイレ(穴を掘るところから、粘土での石積み、トイレの設置までの工程)を視察することができました。「トイレができるのが楽しみなので、作業は苦痛でない」という話を村人から聞きましたが、このような意識をもっているのは現地NGO やユニセフから十分な教育(村人皆が間接的にうんちを『食べている』という認識、下痢の原因)を受けてきたからだと思います。
「nepia 千のトイレブロジェクト」の家庭用トイレ建設への支援では、必要な労働力は村人が供給します。その理由は、村人自身で作り上げたものは大切に使うことと、自分たちで作ったものは壊れた場合でも自分たちで修理が可能だからです。このような衛生教育や意識改革、壊れても自分たちで修理可能なシステムにするということに、「nepia 千のトイレプロジェクト」が単に1000 個のトイレを作るだけのものでなく、継続的な衛生習慣を身につけてもらう支援であることを理解することができました。

2010年キャンペーンの支援対象候補地であるアイトゥラ村ではCLTS(Community Led Total Sanitation:コミュニティ主導の総合衛生)という屋外排泄を根絶する手法の実践を予定しています。CLTS は村内での排泄マッピング、排泄物が口を通して病気の原因になることへの理解、村全体での屋外排泄根絶宣言などを行い、自発的な活動を啓蒙することを主軸に置く手段であり、よりトイレでの排泄の継続性が上がり、資材供給時期や数量に依存せずにトイレの設置軒数増が期待されます。支援について村とNGO・ユニセフ・王子ネピアで対話があり、参加者も非常に多く、村人の関心や期待が高いことを感じることができました。

さらに、ククマテ村およびアイトゥラ村にて「うんち教室」を実施しました。うんちができるまで、うんちの種類、トイレとうんちの関係から手洗いなどの大切さまで紙芝居を使って伝えました。小学生はとても恥ずかしがりやで、質問を投げかけてもなかなか返してくれない場面もありましたが、真剣なまなざしとたまに見せてくれた笑顔が印象的でした。1年後の再訪問の際に、「履物を履いてトイレに行くこと」「トイレでうんちをすること」「トイレ後の手洗いをすること」の3つが習慣として身についているもしくは、覚えていてくれればと思います。

今回の視察を通して、トイレが設置された村からはより多くの笑顔を見ることができました。入社当時に強く持っていた「製品を通してひとを喜ばせるような仕事がしたい」「ひとに喜んでもらえる製品作りがしたい」という近年ずっと薄まってきていたこの気持ちを呼び起こしてくれる良い機会でした。
東ティモール農村部の生活や現地の子供たちを見て、私にとってこの支援は続けていきたい活動になりました。これからも、自分の職務を全うし、東ティモールの衛生環境改善に協力できればと思います。

CSRサポートスタッフ制度について

王子ネピアは、2010年より、自社が取り組む社会貢献活動を社員一丸となって推進すべく、社内公募による「CSRサポートスタッフ制度」を新設しました。希望者から選ばれた一般社員が、プロジェクトの視察メンバーとして東ティモールを訪問。自分の目で見てきた現地の様子を、日本国内の「うんち教室」などの活動を通じて、伝えていきます。