ホーム > 2014年度視察レポート > 視察3日目/6月4日
前日に続いてソロ村を訪問。この日の目的は、ゲルドゥ集落とテルロラ集落の共同のCLTSのトリガリングセッションの視察です。
第1部は子どもたちへのトリガリング。約30名の子どもたちが、村役場横の広場に集まってきました。まずは、チョークの粉で自分たちの住んでいる町のマップを作ります。地面に道路や家の位置、さらにはトイレの場所、トイレのない家の子は屋外排泄の場所などを記していきます。トイレの重要性を意識してもらうのが狙い。えっ、そんなところでトイレをしているの?ここはうちの裏山だよ、汚いよ!トイレのある家の子どもから、声があがります。屋外排泄という行為を恥じ、その不衛生さによって自分たちが病気になることを自ら気づき学ぶ。プログラムの最後では「トイレがないと病気になる♪お父さん、お母さん、うちにトイレをつくって♪」とトイレの重要性を流行歌のメロディに乗せて歌ってくれました。
第2部は、大人たちへのトリガリングです。こちらは村役場の中で行われました。2集落から35名ほどの大人たちが参加。チョークの粉や色紙を使ってのマップづくりは、広場で見た子どもたちへのトリガリングと同じです。ただ違うのは、コミュニティの中で自主的に衛生の大切さを説くナチュラルリーダーの存在。今回のトリガリングでも、メノさんというナチュラルリーダーが住民たちに訴えました。川で排泄することが、自分たちの病気につながる。だから屋外排泄をやめようと訴える彼の提案は、ユニセフやNGOのスタッフのそれとは違い、仲間の意見として受け入れられやすいと言います。
しかし、いつもすんなり意見がまとまり、トイレづくりに動くわけではありません。お金をかけなくてもトイレはできる、トタンなど村にある材料を使って自分たちの手ですぐに着手しようという意見。トイレづくりはお金のかかるもの、政府やNGOから資材をもらってつくるもの、だから資材の提供を待とうという意見。両者互いに積極的に意見交換が行われました。
ゲストとして、過去にトリガリングを実施し、既にトイレをつくったラエブティウド集落のルシンダさんとカヌドゥ集落のジョンさんが、その経験談や効果などを披露。その話に心が動いた人も多く、最終的には多くの人たちが、自分たちの手でトイレをつくろうという意識になりました。
しかし、この日トイレをつくろうと宣言した者はわずかでした。宣言した人には、トイレづくり開始日と完成予定日をボードに書いてもらい、サインをしてもらう。そうすることで、具体的なアクションにつながるのだそうです。
ソロ村での視察を終え、一行は午前中のトリガリングにゲストでスピーチをされたルシンダさんをマヌタシ村のラエブティウド集落に訪ねました。ここは山の斜面にある風光明媚な村。川をはさんで、大きな山がそびえています。傾斜地をうまく利用した村に住居が点在。そのいちばん高いところに、ルシンダさんと夫のアニシトさんの家がありました。
さっそく、トイレを見せてもらいます。屋根も壁もしっかりとした造り、便器にはフタがついていました。メタンガスを抜く排気筒もきちんと設けています。驚くほど立派なトイレですがぜんぶ手作り、工期は1週間もかからないそうです。特別な素材ではなく、トタンや木材などすぐに調達が可能な材料をつかっていました。
その技を見ようと、今では近隣の集落から大勢の方が来られると言います。そして、トイレのつくり方が分からない人には、きちんと教えてあげているそうです。
「実際にトイレをつくってから、子どもたちは下痢をしなくなり、健康状態も良くなりました。」ルシンダさんのこの言葉は、きっと大勢の人がトイレづくりを始めるきっかけになるでしょう。体験者の生の声を伝えることも、立派な啓発活動なのですから。
その後、カヌドゥ集落を訪問。現在建設中のトイレの状況など、3世帯3カ所を視察しました。巨大な穴を掘ったり小屋を立てたり、意外に重労働。しかしながら、みなさん誇らしげにトイレ造りを楽しんでいました。